連載企画

注目の人:全国の海洋センター・クラブで活躍する方や、スポーツ選手など、B&G財団が注目する人にインタビューをしています。

No. 101

県や地域の枠を乗り越えて、幅広い事業の展開をめざしたい!

上から:久喜市栗橋、松伏町、下野市国分寺

2014.06.25 UP

~海洋センター間の連携事業を進める、2県3カ所の地域指導者会~

日頃の事業活動において、他県や近隣の海洋センター同士が連携するケースはそう多くありませんが、埼玉県松伏町B&G海洋センターと同県の久喜市栗橋B&G海洋センター、そして栃木県下野市国分寺B&G海洋センターでは、それぞれの地域指導者会が中心になって、平成22年からカヌー教室や水辺の安全教室などで事業の連携を進めています。
「センター同士が手を組むことで人手に余裕が生まれ、異なるアイデアも出るようになるので、個々に行う場合に比べて事業の幅が広がります。また、こうした様子を見て、協力し合いたいと相談に来る他のセンターも出てくるようになったので、連携の輪はさらに拡大していくと思います」と語る、久喜市栗橋B&G海洋センター指導者会会長(B&G全国指導者会副会長)の川島正光氏。今回の注目の人は、川島氏を含む3センター指導者会の皆さんに、連携を始めた経緯や課題点、今後の展望などについてお聞きしました。

プロフィール
● 久喜市栗橋B&G海洋センター

昭和63年(1988年)開設(体育館・プール)。健康・福祉、文化を重視したまちづくりを進める拠点として機能しており、転倒・寝たきり予防プログラム「元気アップ教室」などの健康づくり活動に力を入れている。

● 松伏町B&G海洋センター

平成元年(1989年)開設(体育館・プール)。中央公民館と併設されており、周辺には全天候型テニスコートや野球場がある松伏記念公園、ならびにサッカーなどができる多目的競技場を設けた松伏総合公園があって、町の健康づくり推進に活用されている。

● 下野市国分寺B&G海洋センター

昭和58年(1983年)開設(体育館・プール)。野球場やテニスコートを有する運動公園のなかにあって小中学校も周辺に控えていることから、各種サークルや児童生徒の利用が多く、地域スポーツの中心的な役割を担っている。

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第4話(最終話)指導者の情熱を持ち続けよう!

連携の課題

久喜市栗橋指導者会の協力を得て松伏町海洋センターが実施した水辺の安全教室。お互いに指導者を派遣し合いながら、充実した指導体制を整えています

 「障がい者カヌー&水辺の安全教室」や「水辺の安全教室 in 栗橋小学校」などの事業を通じて、連携を深めた松伏町、久喜市栗橋、そして下野市国分寺の各指導者会。お互いの活動を支え合うことで充実した指導体制を整えることができるようになりましたが、県や地域を越えた取り組みゆえに、それぞれを行き来するだけでも時間や手間が掛かります。

 「一番遠い下野市国分寺から松伏町まではクルマで2時間ほど掛かりますが、バイパス道路一本で行けるので、さほど移動の大変さは感じません。ただし、土曜日に松伏町、日曜日に下野市国分寺といった具合に活動が連続すると、それなりにスタミナも必要です」

 特に夏場はイベントの重なるケースが増えますが、「そんなときでも、極力、3つの指導者会が都合をつけ合って人手の確保に努めます」と、下野市国分寺の近藤さんは語ります。

 「何度も3つのセンターで連携事業をしていますから、人手を出し合うことのありがたさはお互いによく知っています。ですから、応援を求められたら、なんとかして手伝おうという気持ちになるものです」

 「よし、手伝ってあげよう」という気持ちのノリがなければ、連携事業は続かないと指摘する近藤さん。もっとも、そのためには自分の仕事を休まなければならない場合も出てくるため、3つの指導者会それぞれに職場の理解を求める努力が続けられています。

初心忘るべからず

関東ブロック連協の指導者会議。積極的に意見を交換しながら指導者意識の連携を図ります

 下野市国分寺の場合、B&G指導者の資格を持つ市の職員なら、どの部署にいても海洋センター事業を休日などに手伝う際は、時間外勤務扱いになって手当も出ることになっています。これは、指導者会を立ち上げた際に、メンバーの熱意によって実現したものでした。

 「時間外勤務の件は、何度も上司に海洋センター事業の意義を説明して理解してもらいました。また、こうして現役およびОB指導者の活動が認められているので、指導者会として誰がいつのイベントを手伝うか、年度初めに年間予定をしっかり組むことができます」

 予定を組みながらОBの協力を求めている現役担当者の近藤さん。腰の重いОBには、「沖縄に行かせてもらって資格を取ることができたのだから、たとえ海洋センターから異動になっても手伝う気持ちを忘れないでください」といって説得するそうで、渋々腰を上げたОBも手伝ってみるとおもしろくなって、その後も手伝ってくれるようになるそうです。

無償譲渡の条件

 久喜市栗橋指導会の場合は、4年前に合併して市になった事情もあって海洋センターをよく知らない職員もいるため、海洋センターや指導者会の存在を広く知ってもらう努力を続けています。

 「日頃から海洋センター事業の周知に努めていますが、それはB&G財団の事業に協力していくことが施設を無償譲渡された際の条件になっているからにほかありません。海洋センター所在自治体や地域指導者会は、積極的に海洋センターの事業やB&Gが推進する事業に参画していくことが求められているわけです」

 B&G財団事業への協力が無償譲渡の条件になっていることを忘れてはいけないと語る、久喜市栗橋指導者会の松田さん。現在、3つの海洋センターが行っている連携事業も、B&G財団事業への協力を大きな枠で捉えた活動です。

下野市国分寺B&G海洋センターが中心になって実施した思川のリバーツーリング。松伏町、久喜市栗橋の各海洋センターに加え、明和町B&G海洋センター(群馬県)のB&G特派員、島田さんも取材を兼ねて指導も担当してくれました

 「もっとも、海洋センターの仕事から離れたОB指導者には、現在の部署の仕事もあるわけなので、そちらが優先事項になって当然です。ですから、私たち久喜市栗橋指導者会では、『どんな部署に異動してもB&Gの理念を忘れずに、できる範囲で協力しよう』を合言葉にしています。私にしても、後輩の指導者が一生懸命に海洋センターの事業を進めている姿を見て、できる範囲で精一杯お手伝いしていこうという気持ちでいます」

 この合言葉こそが、指導者会の基本的なスタンスになると指摘する川島さん。また、こうしたなかで昨年に実施した『水辺の安全教室 in 栗橋小学校』の場合は、『地域の特色のある事業』に選ばれたことで、自分の部署を休んで教室を手伝うことに上司が理解を示してくれました。川島さんは、「このような活動助成は、指導者にとっても動きやすくなるので、とてもありがたい」と述べていました。

他の海洋センターを見て歩こう

関東ブロックでは、B&G全国ジュニア水泳競技大会にスタッフを派遣して運営を支えています。このときばかりはブロック総出で横の連携を図ります

 3つの海洋センターが連携するようになった大きなきっかけは、B&G特派員の取材にありました。取材に来た特派員が、取材をしながら事業を手伝って意気投合したことが、連携の第一歩だったのです。

 「B&G特派員になると、同じブロック内のさまざまな海洋センターの現場を直接見ることができるので、指導者としてたいへん勉強になります。また、取材先の担当者と事業についていろいろな話をすることになるので、情報交換のやり取りを通じて仲間意識が高まります」(川島さん)

 「単に取材をするだけでなく、取材を通じて指導者としての意識をお互いにつないでいく気持ちが大切で、そこから協力関係が生まれます。写真を撮ってコメントを拾うだけで帰るか、意見を交換して今後の事業展開につなげるか、その違いはとても大きいと思います」(近藤さん)

 「要は、B&G指導者としての意識をどれだけ持ち続けられるかによると思います。特派員は2年の任期で終わってしまうし、職場の異動もあるはずですが、どのような立場にいようとも、B&G指導者であるかぎりは指導者会を通じて絶えず海洋センター事業に関心を寄せていたいものです」(川島さん)

 「指導者会には任期も異動もない」と語る川島さん。そのフットワークを活かして、これからも指導者同士の連携によって地域や県を越えた活動を広めていきたいと意欲を燃やしていました。(※完了)