連載企画

注目の人:全国の海洋センター・クラブで活躍する方や、スポーツ選手など、B&G財団が注目する人にインタビューをしています。

No. 99

B&G指導員親子が獲得した、OP級世界選手権大会へのチケット


2014.04.16 UP

二人三脚でヨットの頂点をめざす、B&G時津海洋クラブの尾道さん親子

OP級ヨットの日本代表チームに入るためには、数々の国内大会で上位の成績を収めたうえ、全日本選手権大会や最終選考会レースを勝ち抜かねばなりません。
2014年度の日本代表チームを決める最終選考会レースは昨年12月に別府市で実施され、幼い頃からアドバンスト・インストラクターの父、輝寿さんの指導を受けながら二人三脚で練習に励んできたB&G時津海洋クラブの尾道佳諭君(中2)が準優勝を獲得。4位に入ったB&G兵庫ジュニア海洋クラブの藤原達人君(中2)とともに、今年10月にアルゼンチンで開催される2014年度 OP級ヨット世界選手権大会に出場する日本代表チームに選抜されました。
今回は、頂点の舞台に立ったら「少しでも上位をめざしたい!」と意欲を語る尾道佳諭君と、その活躍をサポートし続けるB&G指導員、輝寿さん親子の活動に注目しました。

プロフィール
● 尾道輝寿(おのみち てるひさ)さん

昭和50年(1975年)生まれ。長崎県時津町出身。中学1年生のときからB&G時津海洋クラブでヨットを始め、大学を出ると町役場に就職。アドバンスト・インストラクター資格を取得して海洋センターに5年間勤務し、以後、別の部署に異動してからも海洋クラブで子供たちのヨット活動を指導し続けている。

● 尾道佳諭(おのみち けいと)くん

平成11年(1999年)生まれ。長崎県時津町出身。小学1年生のときから、父、輝寿さんの指導を受けてヨットを始め、小学2年生でB&G OP級西日本大会Cクラス優勝。以後、数々の国内大会で頭角を現し、昨年はヨーロッパ選手権にも出場。今年は10月にアルゼンチンで開催される世界選手権大会への出場が決まっている。

● B&G時津海洋クラブ

平成元年(1989年)、時津町B&G海洋センターの設立に併せて活動を開始。体育館の隣に建設された艇庫を拠点に、大村湾でヨットやカヌーの練習に励んでおり、会員は国体などの全国大会に積極的に出場している。

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第3話乗り越えた壁

雲の下には風がある!

 初心者向けの簡単なレースながら、小学2年生になって出場したB&G OP級ヨット西日本大会のCクラスで優勝した佳諭君。ヨットをやめたいと思い悩んだ時期もありましたが、3、4年生のときには中級レベルのBクラスで連覇を達成することができました。

 「Cクラスは目の前のブイを回って帰ってくるだけの、とてもやさしいレースですが、優勝をした際には何やら勝負強さを感じさせてくれました。その後、3、4年生と続けてBクラスで勝つことができたので、この調子でさらに前に進んでいってもらいたいと思いました」

 そう振り返る、父の輝寿さん。4年生で優勝した際には、副賞で設けられた「B&Gドリームキャンプ」への招待も受けることになり、沖縄で元アテネオリンピック日本代表監督の小松一憲氏からマンツーマンの指導を受けるチャンスに恵まれました。

 「ドリームキャンプでは、元オリンピックの監督さんから直接いろいろなことを教えてもらって、とてもためになりました。『雲の下には風がある。それは濃いほどに強い』という教えは、いまでも大切にしています」

 東西2つのB&G OP級ヨット大会から男女1名ずつ計4名しか招待されなかったB&Gドリームキャンプで、貴重な練習を積むことができた佳諭君。沖縄の体験はヨットを続ける大きな後押しになりました。

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小学4年生のときに、B&G OP級ヨット西日本大会Bクラスで連覇を達成(左から2番目)。優勝の賞状の上にB&Gドリームキャンプの招待状も掲げています

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小学4年生のときに初めてOP級全日本選手権大会に出場。まだ、あどけない表情が残ります

頂点の壁

B&Gドリームキャンプに参加したときに撮影した、元オリンピック監督、小松一憲氏とのツーショット。マンツーマンで貴重な指導を受けることができました

 小学4年生で、B&G OP級ヨット西日本大会Bクラス2連覇を達成した佳諭君でしたが、この年には悔しい思いも体験しました。江の島で開催されたOP級全日本選手権大会に初めて出場したものの、大きな波と強風に翻弄されて満足な結果を残すことができなかったのです。

 「普段、内海の大村湾で練習していることもあって、佳諭にとって江の島で経験した外海の波と風は驚きでした。また、指導する私としても、そのような厳しい海域でトップレベルの選手たちが競り合う姿を垣間見て、全日本選手権の壁の厚さを痛感しました」

 これからは、いろいろな海を経験していかねばならないと悟った輝寿さん。翌年も山口県で開催された全日本選手権大会に挑みましたが、やはり強風と高い波に苦戦して成績は振るいませんでした。

 「小学5年生になってからは、B&G OP級ヨット西日本大会でも全日本レベルの選手が集まるAクラスに出場しましたが、さすがにBクラスより強豪ぞろいのため、思ったほどの成績を収めることができませんでした」

 技術の面でも経験の面でも、まだまだ足りないところがあったと振り返る輝寿さん。「全国レベルの大会に出て、できるだけ上位に入ろう」という目標に掲げて地道に練習を重ねていきました。

近づいた夢

 トップレベルの戦いに加わって大きな壁があることを知った輝寿さんでしたが、厳しいレースにもまれながら、佳諭君は確実に力をつけていました。

 「小学6年生のときも唐津で開催された全日本選手権大会に出させてもらい、『できるだけ上位をめざそう』という意気込みでレースに臨んだところ、これまでの苦い経験が踏み台になったのか、小学生の部で3位に食い込むことができました」

B&Gドリームキャンプでは実戦さながらの模擬レースも行って、さまざまなスキルを身につけました

 これまでにない成績に驚いた輝寿さんでしたが、周囲から『この成績なら日本代表チームを選ぶ2次選考会レースに行けるのではないか』と言われて、さらに喜びが増しました。

 「本当にそうなのだろうかと疑心暗鬼になりましたが、2次選考会レースへの出場が確かに決まったことを知ると、とうとうここまで来ることができたかと思って感激しました」

 2次選考会レースは和歌山で開催され、終わってみれば江の島大会と同じようにもうひとつの成績でしたが、この貴重な経験によって、日本代表の座が決して夢ではないことを感じた佳諭君と輝寿さんでした。(※続きます)