連載企画

注目の人:全国の海洋センター・クラブで活躍する方や、スポーツ選手など、B&G財団が注目する人にインタビューをしています。

No. 95

すべての町の子に、たくましく生きてもらいたい


2013.12.19 UP

水辺の安全教室を中心にさまざまな体験学習に力を入れている、宮城県川崎町

杜の都、仙台市の南隣に位置し、山や川の豊かな自然に恵まれた宮城県川崎町。昭和60年に開設した海洋センターを拠点に、さまざまなスポーツや健康増進事業を進めてきました。4年前からは全小学校の体育授業に水辺の安全教室を採用し、すべての町内の小学校の子供たちが水辺の安全知識を学び、水と親しむことの楽しさを体験するようになりました。これは、「学力だけでなく、たくましく生きるための知恵を身につけることも大切である」と、各小学校の校長先生が考えたからでした。ほかにも、"運動笑楽校"という名の総合型地域スポーツクラブや学校支援ボランティア(学校応援団)による地域の協働教育に力を入れる川崎町。その取り組みの様子を関係者の皆さんからお聞きしました。

プロフィール
● 宮城県川崎町

仙台市から約20km南に位置し、人口は約9,600人(平成25年10月現在)。蔵王山麓域にあって名取川水系の河川が釜房湖に流れる、自然豊かな環境を有している。そのため、キャンプやカヌー、スキーといったアウトドアスポーツ、レジャーが盛んで、水辺の安全教室を中心とした子供たちへの野外体験教育にも熱心に取り組んでいる。

● 川崎町B&G海洋センター

昭和60年(1985年)開設。運動場や多目的コートが隣接し、町のスポーツ拠点として機能。各種大会や教室等、町内のほとんどのスポーツ行事に利用されているほか、4年前からは町内全小学校で水辺の安全教室を実施。指導者会は学校支援ボランティアとして子供たちのサマーキャンプや登山支援活動などに協力している。なお、平成23年には東日本大震災により施設に甚大な被害が生じたが、B&G財団助成事業で復旧工事を実施して現状に復帰した。

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第3話指導者会の力で、かわさきっ子を応援しよう!

新しく生まれた小学校

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楽しそうに字が並ぶ「運動笑楽校」のパンフレットの表紙。思わず手にとって中身を見たくなります

 「るぽぽ かわさき自然塾」を通じて、都会の子供たちにも「水辺の安全教室」を広めていった川崎町B&G海洋センター。昨年の5月に町が総合型スポーツクラブ「運動笑楽校」を立ち上げてからは、クラブ運営の受け皿としても機能していくようになりました。

 「県から、川崎町で総合型スポーツクラブができないかと相談されたため、いろいろ検討した結果、海洋センターのなかに事務局を設けてクラブの活動を始めていきました」

 クラブの事業を考える前に、クラブの名前を考えることに苦労したと振り返る丹野さん。クラブを設立する直前に町内の7つの小学校が4つに併合されたことがあり、なにか新しい小学校を作ろうという気持ちで「運動笑楽校」という名前になったそうです。

 「競技スポーツは、もともと町の体育協会やスポーツ少年団を通じて熱心に取り組んでいたので、『運動笑楽校』では協会やスポーツ少年団がしていない競技や、『スポーツ少年団』に入る前の子にスポーツの基本を教える活動に力を入れていきました」

 総合型スポーツクラブを作ることで、スポーツ少年団や体育協会団体との間で、会員の取り合いが起きることを避けたかったそうで、川崎町は、海洋センターを核にしながら新旧の組織でスポーツ事業のすみ分けを行っていきました。

 「人気のある野球やバレーボールなどについては『運動笑楽校』でもちびっこ〇〇クラブとして教室を開きました。指導者は町内のスポーツ少年団指導者や体育協会会員が行って、スポーツ少年団入団前の楽しい時間としています」

 このほか、体育協会の各競技団体には月に1度だけ練習時間を割いてもらい、競技団体のベテランの人たちが「運動笑楽校」の会員と一緒に活動を楽しみます。こうすることで、初心者でも「運動笑楽校」で競技スポーツに触れることができるうえ、競技団体の人たちにとってはスポーツ指導を習得するよい機会になっているそうです。

 「レクリエーションに関しても、従来は町が提供するメニューに住民が参加するだけでしたが、『運動笑楽校』ができてからはクラブのメンバーが皆で話し合いながら、してみたい教室を考えていきました」

 こうして、自由な発想で活動の輪を広げた結果、それまで海洋センターが参加者を募っていた「B&G親子ふれあいキャンプ」も「運動笑楽校」で実施するようになりました。

 「今年の『B&G親子ふれあいキャンプ』は、家族の誰かが『運動笑楽校』の会員でなければ参加できないことにしましたが、10組の親子が参加して賑わいました。地元のスキー場のゲレンデを利用してのキャンプは新鮮な感覚で、近くにある川で水辺の安全教室やカヌー体験を行いました。また、ここは町内の小学生を対象にしたキャンプイベントと同じ場所だったので、効率のよい準備ができました」

 いろいろな工夫を考えながらスタートした「運動笑楽校」。海洋センターを拠点にすることで、活動の幅がどんどん広がっていきました。

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海洋センターには、「運動笑楽校」で行っている各プログラムの活動写真が、所狭しと展示されていました

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今年、スキー場で実施された「B&G親子ふれあいキャンプ」。10組の親が参加して楽しい時間を過ごしました

ボランティアで活躍するB&G指導者会

 川崎町では、平成22年度に「かわさきっ子応援団」を立ち上げて学校支援ボランティア組織づくりに着手し、翌23年度からは「宮城県協働教育プラットフォーム事業」として、家庭教育・学校教育・地域活動それぞれに支援の輪を広げていきました。

 「『かわさきっ子応援団は』、住民ボランティアの力を借りながら、学校・家庭・地域が一体となって子供たちの成長を見守ろうという思いから生まれましたが、B&G指導者会でもなにか協力していこうという意見でまとまったので、会として応援団のボランティア名簿に登録しました」

 川崎町のB&G指導者会は平成21年9月に発足し、現在は10人のメンバーで構成されています。会として「かわさきっ子応援団」に協力したことに町や学校は大きな期待を寄せています。

 「ボランティア支援には、本の読み聞かせやグランド整備の手伝いなど、いろいろな仕事がありますが、B&G指導者会では、おもにスポーツ活動の支援を行っています。特に、川崎町が全小学5年生を対象に毎年実施している『セカンドスクール』では、指導者を派遣して登山などの自然体験学習をサポートしています」

 「セカンドスクール」に参加した児童は、蔵王少年自然の家に一週間宿泊しながら仲間との共同生活で協調性や自主性を養い、登山や魚つかみなどの野外体験を通じて自然や故郷の大切さを学んでおり、B&G指導者会は山を登るルートの下見や登山の付き添いなどを受け持っています。

 「山に登ったら、必ず頂上で自分たちが暮らす町を見下ろすようにしています。このような体験を通じて、子供たちは故郷のありがたさや大切さを実感することができます」と説明する丹野さん。これから先も、B&G指導者会として、さまざまな角度から学校や家庭教育を支援する活動を続けていきたいと語っていました。(※続きます。第4話では、小山修作 町長、佐藤芙貴子 教育長のインタビューをお届けします)

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「セカンドスクール」で蔵王の頂をめざす子供たち。B&G指導者会がルートの下見や引率のボランティア支援を行っています

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山の頂上に着いたら、達成感を味わいながら眼下に広がる景色を眺めます。誰もが、故郷の大切さを実感するそうです