連載企画

注目の人:全国の海洋センター・クラブで活躍する方や、スポーツ選手など、B&G財団が注目する人にインタビューをしています。

No. 91

世界に羽ばたく子を、わが町で育てたい!


2013.08.28 UP

海辺の活動、競泳選手の育成に励む、志賀町富来B&G海洋センター

B&G全国ジュニア水泳大会で常に優秀な成績を収めている石川県チーム。その一翼を担っているのが、池端久泰選手(2009年度最優秀選手)や日髙雅子選手(2012年度最優秀選手)を輩出している、志賀町富来B&G海洋センターです。
施設がオープンする際に愛称を公募し、小学生が考えた「フレア」(フレッシュアップ・クラブの略)という呼び名がつけられた同センター。1998年に事業を始めて以来、多くの住民に親しまれながら地域の健康づくりや子供たちの水泳指導に励んでいます。
今回は、こうした活動を二人三脚で支え続けている2人の指導員を連載で紹介するとともに、最終第4話では、海洋センターに寄せる期待を小泉 勝 町長にお聞きいたします。

プロフィール
● 志賀町富来B&G海洋センター

旧富来町時代の平成10年(1998年)、屋内温水プール施設として開設。愛称を公募し、「フレア」という名で住民に親しまれ続け、平成17年に2町合併よって志賀町となってからも子供たちの水泳教室から高齢者の健康づくり事業が熱心に続けられている。
また、B&G富来海洋クラブも昭和61年(1986年)に開設。手作りの艇庫を拠点に、カヌーやOPヨット、キャンプなどの活動が盛んに行われている。

● 谷場 宣彦さん(右)

1974年生まれ、旧志賀町出身。民間スイミングクラブを経て、海洋センターの開設に合わせて旧富来町役場に就職(現:志賀町教育委員会)。以後、海洋センター職員として各種水泳教室の指導にあたっている。

● 戸野 陽介さん(左)

1976年生まれ、旧富来町出身。旧富来町役場に就職し、海洋センターに赴任(現:志賀町教育委員会)。以後、谷場氏とともに海洋センターの運営にあたる一方、海洋クラブの指導にも励んでいる。

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第4話(最終回)子供たちには、大きな夢を抱いてほしい!

インタビュー: 小泉 勝 志賀町 町長

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小泉 勝(こいずみ まさる)志賀町町長
昭和41年(1966年)生まれ、旧志賀町出身。
米国ウッドジュニアカレッジ卒。
平成11年~平成15年:志賀町議会議員。
平成15年~平成19年:石川県議会議員。
平成21年9月~:志賀町町長(平成17年に旧富来町、旧志賀町が新設合併した後の二代目の町長)。

 海洋センターの子供たちが水泳大会で賞を取るたびに、励ましの声を掛け続けている志賀町の小泉 勝 町長。地域住民の活発な利用を受けて老朽化した、海洋センターの大規模修繕についても大きな関心を寄せています。

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海洋センターに通う高齢者の皆さん。町立病院に紹介されて来る人も少なくありません

●海洋センターを訪れた際には、「30年後を見据えた修繕計画を考えたい」という声を聞きしましたが、町としてはどのような期待を施設に寄せているのでしょうか。

 ―「30年後を・・・」という声には、それだけ町にとって必要な施設であるという思い入れがあるのだと思います。私たちの町では少子化が進んでいて、小学校の統廃合が続いてきました。数少ない子供たちは大切に育てたいですから、全国大会に行くような優秀な選手を育ててくれる海洋センターは貴重な施設です。

 また、海洋センターは冬でも使える屋内温水化やバリアフリー化を実現しています。そのため、高齢者や障害者も安心して利用できます。最近では、健康診断で運動の必要性が問われた高齢者に声を掛けて水中運動のメニューを体験してもらっていますし、関節を患った人には町立病院の紹介でリハビリのためにプールに通ってもらっています。

 こうしたことから海洋センターのプールは連日フル稼働しており、子供から高齢者まであらゆる住民の健康づくり拠点になっています。大きな目で見れば町の医療費削減にも貢献しているわけなので、このような施設は長い目で見守っていきたいと思います。

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ビーチクリーンに励む海洋クラブの子供たち。漂着ゴミを掃除しながら故郷を思う心を育てています

●海洋センターもさることながら、海洋クラブの活動も活発です。町の子供たちには、地元でどのような体験をさせてあげたいと思いますか。

 ―私が子供の頃には周辺の海で貝取りや釣りなどをしてよく遊んだものでしたが、最近は「海はネバネバするから嫌いだ」という子もいるというので驚きです。

 その点、海洋センターのプールで泳ぎを覚え、海洋クラブでさまざまなアウトドア活動を体験する仕組みが整っているのは喜ばしいかぎりです。

 また、近頃は諸外国からたくさんのゴミが海岸に流れ着くため、町をあげてビーチクリーンに力を入れており、海洋クラブの子供たちもこうした環境保全活動に取り組んでくれています。漂着するゴミの問題は深刻ですが、逆に言えばそれだけ美しい海が地元にあるということですから、町の子供たちには海で遊び環境を守る活動に励みながら、故郷のすばらしさを学んで欲しいと願います。

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「日本の海水浴場55選」にも選ばれた増穂浦海岸。海水浴で賑わうほか、鎌倉の由比ヶ浜、紀伊の和歌浦と並ぶ日本小貝三大名所の一つにもなっていて、打ち寄せられる貝の多いことで有名。海洋クラブの活動水域にもなっています

 大学に入ったり就職したりで都会に出る子が多いのも確かですが、都会に出て振り返るのは子供の頃に故郷で遊んだ記憶です。人間が建てたビルは老朽化しますが、私たちの町にある自然は年月が過ぎても変わることはありません。都会に出て活躍してくれてもうれしいのですが、もし自然に恵まれた故郷の魅力が再発見できたらなら、ぜひとも地元に戻って魅力ある町づくりに励んでもらいたいと思います。

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志賀町近郊の美しい棚田。町の農村景観や農産物、慣習などは日本で初めて世界農業遺産に選ばれています

●町長さんも町を出てアメリカに留学した経験をお持ちです。生まれ故郷を離れたことで、どのようなことを学びましたか。

 ―アメリカ人に比べ、とかく日本の人たちの考え方は殻にとじこもりがちだと感じました。もっと心を開いてオープンな発想を持ち、なおかつ人任せではなく自分の力で道を切り開こうとする積極性が大切です。私が政治の世界に入ったのは、こうしたことを学ぶことができたおかげです。年配の方々の意見に加え、若い人の意見も聞いてもらいたいと思ったことが、選挙に出るきっかけになりました。

 ですから、町の子供たちには「自分で自分の壁をつくらず、夢に向かって行動しよう!」と言いたいです。その夢も大きければ大きいほど、やり甲斐を感じることでしょう。私が水泳大会で賞を取った子に声を掛けているのは、こうした気持ちがあるからです。ぜひ、指導者の皆さんには切磋琢磨していただき、世界に羽ばたく選手を育てていただきたいと思います。

●町長さんは、B&G全国サミットにも積極的に出席されています。海洋センター所在自治体の方々と交流されて、どのような感想をお持ちですか。

 ―まず、笹川会長の基調講演にはスケールの大きさに圧倒されつつ、その内容の濃さに感服いたしました。また、各地域の方々と一堂に介する貴重な機会なので交流が深まりました。

 そこで1つ思ったのですが、全国サミットのような会議や自然体験セミナーのような大きな事業を各地が持ち回りで開催するようにしたら、交流もより深まるのではないでしょうか。国体もそうすることで、意味のある大会になったのではないかと思います。少なくとも、私たちの町はサミット会議であれセミナー事業であれ、真っ先に手を挙げさせていただきたいと思います。多くの自治体の皆さんに私たちの町の良さ、自然豊かな環境を見て知っていただくことで、交流が次のステップに進んでいくと思うからです。機会があったら、ぜひ志賀町が立候補したいと思っています。

●お忙しいなか、いろいろなお話をありがとうございました。水泳に励む子供たちのさらなる活躍、そして自然に恵まれた町のさらなる発展を期待しています。

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海洋クラブでは、海だけでなく冬のキャンプ、スキーなどさまざまな活動を展開しています

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今年8月に行われた海洋観察会。子供の頃に故郷の海で遊んだ体験は忘れられません

写真提供:志賀町富来B&G海洋センター