連載企画

注目の人:全国の海洋センター・クラブで活躍する方や、スポーツ選手など、B&G財団が注目する人にインタビューをしています。

No. 87

クルーズで育んだ友情は一生忘れない!

NO.87 クルーズで育んだ友情は一生忘れない!
NO.87 クルーズで育んだ友情は一生忘れない!

上:鈴木美香さん/下:谷中理矩さん

2013.04.25 UP

平成24年度 B&G「体験クルーズ」小笠原に参加した、2人のボランティアリーダーを紹介

37年にわたって続けられてきたB&G財団の体験クルーズ事業。この11年間は全国の小中学生を対象に、東京~小笠原間の航海を実施してきましたが、チャーター客船ふじ丸の売船に伴い、平成24年度をもって休止することになりました。
この、ふじ丸ラストクルーズで子どもたちの世話をしたいと名乗りを挙げた12人のボランティアリーダーのなかに、鈴木美香さんと谷中理矩さんの姿がありました。2人とも過去にメンバーやジュニアボランティアリーダーで乗船しており、自他共に認める"体験クルーズ"の大ファン。「だからこそ、最後の記念にボランティアリーダーとして参加したかった」と語る2人の熱い胸の内に迫ってみました。

プロフィール
●鈴木美香(すずき みか)さん

平成2年生まれ、群馬県出身。小学生の頃から、地元みなかみ町新治B&G海洋センターでカヌーやキャンプを楽しみ、中学2年生のときに母親の勧めでB&G「体験クルーズ」小笠原に参加。高校1、2年時にはジュニアボランティアリーダーを務め、社会人になって1年が過ぎた今回はボランティアリーダーとして乗船した。現在、大学病院に看護師として勤務。

●谷中理矩(やなか りく)さん

平成5年生まれ、茨城県出身。小学4年生のときから、地元B&G茨城八千代海洋クラブで活動。小学6年生、中学2、3年生のときにB&G「体験クルーズ」小笠原に参加し、高校1年生になってジュニアボランティアリーダーを務めた。今回は、ボランティアリーダーとして乗船できる最後のチャンスとして手を挙げた。現在、千葉大学教育学部生涯教育課程に在学中。

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第4話(最終話)生涯教育の場に身を置きたい (谷中理矩さん その2)

たった6日間で育つ深い友情

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父島の寄港地活動では、子どもたちと一緒に大神山トレッキングを楽しみました。野外活動の体験は人を大きく成長させてくれると谷中さんは語っていました

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5日目のプログラム、ワークショップの作業を見守る谷中さん。クルーズも後半になると、子ども同士のコミュニケーションも密になってチームワークが自然に取れるようになりました

 20歳になったらボランティアリーダーをしようと心に決めた谷中さん。ところが、クルーズが休止することを知って、急遽、計画を前倒しすることになりました。

 「大学1年生のときは新しい生活に入ったばかりで落ち着かないと思ったので、2年生になったら乗船するつもりでした。でも、財団のホームページで休止することを知り、1年生だけれどいましかないと思って、すぐに応募しました」

 谷中さんは教育学部に通っていますが、特に学校の先生をめざしているわけでないそうです。小学生の頃からキャンプやカヌーなどに親しんできたことで、生涯教育に高い関心を寄せているからです。

 「生涯教育を勉強したくていろいろな大学を調べているなかで、いま通っている千葉大学の教育学部に生涯教育課程があることを知りました。学校教育を含むすべての教育が生涯教育だと思います。海洋クラブをはじめ、海洋体験セミナーやクルーズを通じて、そのことを体験的に知りました。

 小学校や中学校で1年間同じクラスでも、本当に仲良くなる友だちはさほど作れません。しかし、クルーズでは年齢も住所も異なる子ども同士が、たった6日間の船旅で仲良くなって、その多くが大人になっても交流を続けています。

 体験クルーズが持つ、そんな力がすばらしいと思います。船旅のプログラムを通じて、子どもたちは自立心や協調性といった生きるための知恵を学びます。私は、こうした学校教育とは別の場の教育に興味があります」

自分自身をよく知ろう

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フェアウェルパーティーで子どもたちに囲まれた谷中さん。5回乗ったクルーズすべてで、たくさんの仲間と出会うことができました


 現在、親元を離れて一人暮らしをしながら大学に通っている谷中さん。さまざまな分野を幅広く学ぶことが生涯教育課程の特徴だそうですが、谷中さんはさらに大学以外の場所でも勉強に励んでいます。

 「現在、民間企業が社会貢献事業の一環として行っている"ヤックス自然学校"や、地元茨城県の"幼少年キャンプ研究会"の活動に参加して野外教育を学んでいます。前者はアウトドア活動におけるノウハウの実践が中心になっていて、後者では自然体験活動を通じた豊かな社会と人づくりをめざしています」

 クルーズが始まる一週間前まではアメリカのバージニア州で野外教育のセミナーに参加していたという谷中さん。帰国して、すぐにクルーズの準備を整えました。

 「アメリカでは、環境学習をどのように教えていったらよいのかという教育理論を中心に、かなり実践的な勉強をしてきました。講義が英語だったので苦労もしましたが、とてもためになりました」

 野外教育の体験は、人生のさまざまな壁を乗り越えていく原動力になると語る谷中さん。教室では学ぶことのできない体験主義が、人を大きく成長させてくれると指摘します。その意味ではクルーズも同じで、たった6日間の船旅でメンバーたちは大きく育ちます。

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最後の握手を子どもたちと交わす谷中さん。忘れられない思い出が、また1つ増えました

 「子どもたちには、これから大人になっていく過程のなかで自分自身をよく見て知ってほしいと思います。自分で自分に気がつかないと、なかなか他人とつながれないからです。自分自身に意識を張り巡らせて、感覚を研ぎ澄ませば、自分自身が見えてくるはずです。そんな自分になって周りに目を配れば、きっと心が通う仲間がたくさんできると思います」

 自分がどんな性格で、どんなことが得意なのかを知ることは、自分に自信を持つことにつながります。いろいろな体験によって自分自身と向き合うことができるクルーズを通じて、たくさんの子どもたちが自分に自信をつけることができたはずだと谷中さんは述べました。

 ですから、クルーズが再開した折には、また都合をつけて乗船したいと語っていました。そのときは、講師として参加しているかも知れません。海の上での再会を楽しみにしていたいと思います。
(※次回は5月8日(水)から、クルーズでレクリエーションの講師を務めた東 正樹先生のお話を掲載いたします)