連載企画

注目の人:全国の海洋センター・クラブで活躍する方や、スポーツ選手など、B&G財団が注目する人にインタビューをしています。

No. 87

クルーズで育んだ友情は一生忘れない!

NO.87 クルーズで育んだ友情は一生忘れない!
NO.87 クルーズで育んだ友情は一生忘れない!

上:鈴木美香さん/下:谷中理矩さん

2013.04.10 UP

平成24年度 B&G「体験クルーズ」小笠原に参加した、2人のボランティアリーダーを紹介

37年にわたって続けられてきたB&G財団の体験クルーズ事業。この11年間は全国の小中学生を対象に、東京~小笠原間の航海を実施してきましたが、チャーター客船ふじ丸の売船に伴い、平成24年度をもって休止することになりました。
この、ふじ丸ラストクルーズで子どもたちの世話をしたいと名乗りを挙げた12人のボランティアリーダーのなかに、鈴木美香さんと谷中理矩さんの姿がありました。2人とも過去にメンバーやジュニアボランティアリーダーで乗船しており、自他共に認める"体験クルーズ"の大ファン。「だからこそ、最後の記念にボランティアリーダーとして参加したかった」と語る2人の熱い胸の内に迫ってみました。

プロフィール
●鈴木美香(すずき みか)さん

平成2年生まれ、群馬県出身。小学生の頃から、地元みなかみ町新治B&G海洋センターでカヌーやキャンプを楽しみ、中学2年生のときに母親の勧めでB&G「体験クルーズ」小笠原に参加。高校1、2年時にはジュニアボランティアリーダーを務め、社会人になって1年が過ぎた今回はボランティアリーダーとして乗船した。現在、大学病院に看護師として勤務。

●谷中理矩(やなか りく)さん

平成5年生まれ、茨城県出身。小学4年生のときから、地元B&G茨城八千代海洋クラブで活動。小学6年生、中学2、3年生のときにB&G「体験クルーズ」小笠原に参加し、高校1年生になってジュニアボランティアリーダーを務めた。今回は、ボランティアリーダーとして乗船できる最後のチャンスとして手を挙げた。現在、千葉大学教育学部生涯教育課程に在学中。

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第2話説明なんていらない涙の意味 (鈴木美香さん その2)

乗るなら、いましかない!

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カヌーの出艇を手伝う鈴木さん。ご自身も子どもの頃に海洋センターでカヌーの経験を積んでいました

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担当した組のメンバーと行動をともにする鈴木さん。個性の強い子が多く、手を焼く場面もあったそうですが、船旅を通じて誰もが成長してくれました

 B&G「体験クルーズ」小笠原に中学2年生のときにメンバーで乗船し、高校に入ると1、2年生のときにジュニアボランティアリーダーを経験した鈴木さん。いつかはボランティアリーダーもしたいと考えましたが、なかなかその機会に巡り合えませんでした。

 「高校を出てからは看護師になるための勉強が忙しく、クルーズ自体も新型インフルエンザの影響で休止したり、東日本大震災の影響で日程が変わったりして、応募するタイミングが合いませんでした」

 子どもの頃から看護師になりたかったという鈴木さん。小学生1年生のときに病気で入院した際、看護師さんがやさしくしてくれたうえ、働く姿もかっこよく見えたため、将来、自分も同じ仕事をしたいと憧れを抱いたそうです。

 「本当は、ある程度の経験を積んでから看護師のボランティアとして乗船したいと思っていました。しかし、昨年の秋にツイッターを通じて、今年度をもってクルーズが休止することを知り、何が何でもいま乗るしかないと考えました」

 鈴木さんは昨年の春から大学病院に勤務していましたが、まだ十分なキャリアを積んでいなかったため看護師として乗ることを断念。一般のボランティアリーダーとして応募しました。

 「問題は、長期休暇を取らねばならないことでしたが、クルーズのことを説明して上司の婦長さんに理解していただくことができました。忙しい職場ですから、とてもありがたく思いました」

 鈴木さんが勤めているのは、早産児や低出生体重児、疾患を持つ新生児などを集中的に看護・治療する、NICU(新生児集中治療室)と呼ばれるところです。緊張が続く職場で当直もあり、長い休みを取りにくい仕事ではありますが、婦長さんをはじめ周囲の理解を得て、希望を叶えることができました。

クルーズの友情は人生の宝物

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フェアウェルパーティーでリーダーたちと握手を交わす鈴木さん。こればかりは、何度経験しても感動するそうです


 鈴木さんにとって4回目の乗船となった今回のクルーズ。天気には恵まれたものの、配属された組にはマイペースの子が多く、対応に追われる日が続きました。

 「私たちがメンバーで乗ったときは、リーダーに叱られると緊張して言われたことに必死で耳を傾けたものでした。ところが、いまは叱られること自体に慣れていない感じの子たちもいて、叱られても平気な顔をしてソッポを向いてしまうこともありました」

 叱っても平気な顔をしているメンバーと接しながら、「この子は、どうやって家や学校で過ごしているのだろうか」と、つい心配してしまうこともあったと振り返る鈴木さん。しかし、そのような子も仲間と一緒に生活を送るなかで少しずつ協調性や自主性が高まっていきました。

 「叱られても平気だった子や、やんちゃで手を焼いた子などが、最後の晩のフェアウェルパーティーでどのような成長ぶりを見せてくれるのか期待しています(このインタビューは4日目に実施しています)。誰だって、フェアウェルパーティーで仲間と握手をするときには、感極まって正直に自分を出してくれますからね。

 このときの涙に説明なんて必要ありませんよね。ジュニアボランティアリーダーをしたときには、あちらこちらで泣きながら握手を交わすメンバーたちを見て、『仲良しになれてよかったね』って心のなかでエールを送っていました」

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腕を組んで合唱するリーダーの仲間たち。クルーズに参加するたびに友だちの輪が広まりました

 学校で1年間同じクラスにいても、長くつきあえる親友はそうたくさんはできません。しかし、たった6日間でも、このクルーズの船旅をともに経験すれば、一生続く友情が育まれると鈴木さんは語ります。

 「小さい子は大きい子を見習い、大きい子は小さい子の面倒をみなければなりません。ですから、たった6日間の体験でも同じ組や班には知らない間に結束力が生まれます。そこで芽生えた友情は人生の宝物になると思います」

 実際、メンバーで乗ってから現在まで9年にわたって交友が続いている仲間がいて、ジュニアボランティアリーダーのときにできた友だちもいる鈴木さん。ボランティアリーダーを務めた今回、その輪はさらに広まりました。今後も、クルーズで得たさまざまな体験をもとに、いろいろなことにチャレンジしていきたいと語っていました。
(※第3話:谷中理矩さんに続きます)