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特集:海洋センターの活動を支える指導者会

県連協との連携で活動の活性化をめざす

特集その2:八百津町B&G海洋センター(岐阜県)の取り組み

八百津町B&G海洋センター  ■プロフィール
 

開設:昭和59年。施設:室内温水プール、体育館、艇庫。運営管理:八百津町教育委員会。指導者会発足:昭和61年。現在の会員数:63名(有資格者の町職員:62名、有資格者の一般社会人:1名)。野球場やテニスコートを有する木曽川沿いの蘇水公園に艇庫を持ち、川の上流にあるダムに集まる流木を燃料に利用して温水プールを運営。町のほぼ中央に体育館を備える。

 

 スポーツ健全育成の鍵は、よりよい指導者の確保にあると言われます。特に、マリンスポーツの場合は、初めて体験する人に教えるケースが多いので、充実した指導体制が求められます。
 そのため、地域海洋センターのなかには知恵を絞って十分な数の指導者を確保し、指導者会を組織しながら活発な活動を続けているところも少なくありません。
 今年度、B&G財団では「指導者会の設立」を促進しています。そこで、今回の注目の人では指導者会を組織している地域海洋センター3カ所にスポットを当て、会が発足した経緯や現在行っている活動内容などについて取材しました。


海洋センター兼務の辞令
大きなサマーフェスタの看板
毎年、海洋センター艇庫を使って開催されている「蘇水サマーフェスタ」。近隣の市町村から多数の来場者を集め、カヌーやカッターなど、さまざまなマリンスポーツの体験会が催されます

 体育館、プール、そして艇庫が離れ離れの場所に建設されたため、仕事の連携面で予想外の苦労を強いられることになった八百津町B&G海洋センター・スタッフの皆さん。施設の運営管理を担う町の教育委員会は、役場の課長会に窮状を訴え、町長にも直談判して職場環境の改善を試みました。

 その結果、「海洋センターは町の職員が一丸となって支えていこう」という町長の声に、役場のあらゆる部署が賛同。新人職員は必ず2級センター育成士(現:リーダー)の資格を取ることと定め、資格を手にすると、どの部署に配属されても「海洋センター兼務」の辞令が交付されるようになりました。当然のことながら、指導者の数は年を追うごとに増加。現在、町の職員で50歳以下の人は、ほとんどが何らかの指導者資格を持っている状況になりました。

 「現在、65名の海洋センター指導者(内、町職員64名/詳細は前回参照)が登録されていますが、これまで私たちは指導者会のような組織を立ち上げることはありませんでした。1名(町の関連団体職員)を除いて、他の指導員はすべて町の職員ですから、海洋センターの仕事を平日に応援するのなら通常業務の一環になりますし、休日でも時間外勤務となります。仕事として手伝うわけですから、指導者の活動をサポートするような組織は特に必要なかったのです」

 八百津町役場の職員が休日出勤をした際は、代休を取ることが原則になっています。しかし、休日に海洋センターを手伝って平日に代休を取っていると、自分が配属されている本来の部署の仕事に支障が生じるケースが出てきます。そのため、休日に海洋センターの仕事を手伝った場合は、時間外手当を出すことで職員の理解を得てきました。


 大切なスケジュール調整

心肺蘇生法の勉強中
年に1度は実施されている、指導者を対象にした研修会。最近は救急法の勉強に力が入れられているそうです

  業務の一環として海洋センターの仕事を手伝うために、指導者会のような組織は特に必要ありませんでしたが、町の職員に「海洋センター兼務」を理解してもらうためには、苦労もありました。

 「当然のことですが、『忙しいのは海洋センターだけじゃないぞ!』という声が、職員のなかからあがりました。ですから、兼務の同意を得るのは簡単ではありませんでしたが、当時の町長がB&Gプランに大きな理解を示し、『一丸となって海洋センターを支えよう』と声をあげてくれたことが、とても大きかったと思います。

 また、マリンスポーツはひとつ間違うと命に関わる事故も起きますから、安全対策のためにも十分な指導員が必要であることを、多くの職員が認識してくれました。指導体制が整うと、効率的な施設の運用ができるようになり、指導の中核となるセンター育成士(現:アドバンスト・インストラクター)も、沖縄の研修で学んできたことをスムーズに実践することができました」

 兼務の辞令を基に、各職員が海洋センターの仕事を手伝うスケジュールについては、当初、有資格者を一堂に集めて全体会議を開き、1年間の計画をまとめたうえで調整していたそうですが、現在は電子メールを活用しながらスケジュールを組んでいるそうです。
子ども会のカヌー教室
地元、子ども会を対象にしたカヌー教室。このような機会を通じて、町内の多くの子どもたちがマリンスポーツに親しみます

 「水のシーズンが始まる前に、海洋センターの年間スケジュールをメールで各職員に通知し、各々自分の都合の良い日を選んでもらっています。当然、人気のあるイベントは重複しますので、そのような場合は各人と相談のうえで調整していきます。いくら兼務の辞令を受けているとはいえ、あくまでもお手伝いですから、なるべく各人の都合に合わせるよう努めています」

 スケジュールの調整作業は、職員の理解を得るうえで欠かせません。そのためにも、シーズン前に年間の活動計画をしっかりまとめておく必要があるそうです。
 「4月から艇庫の利用申請を受け付け、6月までに締め切ります。その後、各活動日の参加人数を考慮しながら、リーダー、アクアインストラクラー、アドバンスト・インストラクターと、資格ごとに指導者の数を割り振っています」

 イベントによっては、持ち前の器材だけでは対応できないケースも出てきます。そのような場合は、岐阜県連協を通じて県内の各海洋センターから必要な器材を貸してもらいます。指導者不足に悩んだ当初は、県連協による2級育成士の研修をフルに活用した経緯がありました。
 県連協による海洋センター同士の連携は、とても重要な鍵を握っているそうです。

 取り組むべき新たな課題
OPヨットを楽しむ子どもたち
川とはいえ艇庫の前には比較的広い水面が確保されており、ヨットの活動も盛んです


 これまで順調に推移してきたB&G八百津町海洋センターの活動ですが、現在、課題を抱えていないわけでもありません。

 「地域社会の高齢化に並行して町役場の職員も高齢化しつつあり、海洋センター指導者に関しても例外ではありません。極力、体力を使う夏場の活動は若い職員に手伝ってもらうように調整していますが、その点にこだわっていると1人が何回もハードな仕事をするようになってしまいます。
 指導者の数は充実していますが、いまはスケジュールを割り振る際の年齢構成で苦労しています」

 行政改革が叫ばれて財政的にも厳しい状況が続くなか、海洋センターの活動だけを考えて新規に職員を採用することは非常に難しい面があります。そのため、将来的には一般ボランティアに協力をお願いするようになるかもしれません。

 「町の職員が職務の一環として手伝っているなかでは、万が一、事故が起きたら労災も使えますが、一般ボランティアが参加するようになったら、彼らの安全面をどのように担保するかが大きな課題になると思います。ただ、いまのように町の職員だけで海洋センターを支えていると、高齢化の問題もあって活動内容そのものが活性化しにくい面も出てきます。その意味において、将来的には一般ボランティアの賛同も得たいと思っています」

 活性化という点においては、別の意味の課題もあるそうです。アドバンスト・インストラクターのように、ボート免許を持っている指導者はマリンジェットやモーターボートを使いながら指導できますが、ボート免許を持たないリーダーのような指導者は、何年経ってもエンジンが付いたボートに乗ることができません。

 「ときどき、指導にあたる職員から『いつまでカヌーに乗っていなければならないんだ』と愚痴を言われることもあります。指導員の活性化を考えたら、より多くの人にボート免許を取ってもらいたいのですが、現状、そのような予算は町にありません。また、かつてはイベントが終わった後に弁当などを配って労をねぎらった時期もありましたが、厳しい財政面を考えて、いまは何も支給していません」

 指導者の数だけ揃えば、すべてが解決するわけではありません。どのようにして指導者の向上心を維持していくかという、内なる課題についても大いに考えていく必要があるそうです。(完)



第1話 特集その3 

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