活動記録 B&G全国教育長会議

活動記録 全国から110人の教育長が参加!「第15回B&G全国教育長会議」開催

日本財団助成事業

「防災への備えと被災後のケア ~私たちが地域・家庭・学校でできること~ 」をテーマに全国の教育長らが意見交換

  • 参加者の顔ぶれ

    教育長110人ら関係者148人が出席

  • あいさつする前田康吉B&G財団会長

    あいさつする前田康吉B&G財団会長

防災教育のあり方を再考し、コミュニティで実施可能な方策探る

 B&G財団は、11月6日(火)・7日(水)の2日間、東京・港区の日本財団ビルで、第15回B&G全国教育長会議を開催しました。全国の自治体教育行政のトップが、喫緊の課題である防災教育のあり方について意見交換し、今後の共通認識として、各地の自治体において、全国教育長会議の提言にある「環境・防災・水辺の安全教育を推進する」ことを再認識しました。

女優の岸ユキさんも参加

 全国教育長会議は、B&G海洋センターが所在する全国市町村の教育長が一堂に会し、毎年異なるテーマで実施しているものです。今回は、近年多発傾向にある自然災害への対策を焦点に、「災害への備えと被災後のケア~私たちが地域・家庭・学校でできること~」のテーマで、防災教育に関する基調講演や事例発表を実施。44道府県から110人の教育長を含む教育関係者ら約150人が参加し、防災教育の重要性や教育現場で実践できる備えや対策について認識を共有しました。

新会長に秋田県由利本荘市教育長の佐々田氏を選任

新たに選出されたお三方

新執行部のスタートです

 初日の冒頭で、会長の勇退に伴う執行部の改選を実施しました。新会長に、副会長の佐々田亨三氏(秋田県由利本荘市教育長)を、また新副会長には永井初男氏(広島県安芸高田市教育長)を選任。現副会長の半田幸清氏(北海道剣淵町教育長)の3人で新執行部がスタートしました。佐々田新会長は就任のあいさつで「地元(由利本荘市)は、スポーツ立市として取り組んでいる。スポーツ振興などを通じてB&G財団の理念と活動をより推進していきたい」と述べました。

生命と直結した防災教育を

 続いて、中央大学教授の小峯力氏が「救急救命から生命教育を考える~想定外を生き抜く防災教育~」の演題で基調講演。生命倫理や救命救急が専門分野の小峯氏は、1987年にオーストラリアでライフセービング・イグザミナー(検定官)の資格を取得したライフセービングの第一人者でもあります。講演では、ライフセーバーとして多くの人の死に直面してきた経験から「生命と直結した防災教育になっているか?」との観点が随所に色濃く反映されていました。

命の尊さを力説する小峯・中央大学教授

命の尊さを力説する小峯・中央大学教授

 小峯氏は、東日本大震災で発生した津波が、海岸から陸地に流れ込み、家屋だけでなく多数の人の命を飲み込んでいく凄惨な実物映像を活用し、①通常の状態②音声を消した画像のみの状態③目をつぶらせて音声だけを聞く状態―の3パターンで紹介。その意図として「自分の目線は限りなく不確か。目の見えない人や耳の聞こえない人など一番逃げづらいハンディを抱えた人達の防災を含めて考えるべき」と指摘しました。また「メディアコントロールで、人の命の喪失を見せないのが現在の社会通念だが、人の命(死)が見えることで、災害が具現化され、率先して避難する防災教育ができるのではないか」と防災報道のあり方も取り上げました。

 一方、2000年以降の災害の特徴として、「巨大災害の時代に入っている」と説明。津波の到着時間など、被災状況は自治体間で格差があるため「47都道府県のそれぞれの地域ならではの防災が必要。ハードとソフト両面で対策を講じるべき」と提案しました。

やらされる教育から気付く教育へ

ユニークな活動を手掛ける名物校長の齋藤氏

 引き続き行われた防災教育の事例発表では、東京都荒川区立南千住第二中学校の齋藤進校長が登壇。学校の部活動の一つである「レスキュー部」のユニークな取り組みについて紹介しました。

 同校の「レスキュー部」は、生徒の防災意識の向上と地域貢献を目的に7年前に校長自らが立ち上げた部活動で、近隣保育園との合同避難訓練や地域の高齢者とのふれあいなど、様々な活動を展開し、マスコミなどにも大きく取り上げられている先進的な事例です。今では全生徒の70%が加入する大組織に拡大。成功の秘訣について齋藤校長は、「やらされている教育から、子供たち自らが気付き、行動する教育に転換することが何より大事」と述べました。



 2日目は、各地で行われている防災教育の事例発表や文部科学省の取り組みなどを主な議事に進行しました。

"1"のリアリティが命を守る~各地の防災教育事例から~

 事例発表では、岩手県陸前高田市の金賢治、静岡県掛川市の佐藤嘉晃、愛媛県今治市の八木良二の3人の教育長が、それぞれの自治体で取り組んでいる防災教育について紹介しました。陸前高田市の金教育長は、「2011.3.11子供たちの心~東日本大震災からの7年8カ月~」のテーマで、東日本大震災で甚大な被害を受けた陸前高田の被災状況と現況について紹介。注力している防災教育では、「多くの人が『自分は大丈夫』という根拠のない自信で避難せず命を落とした」ことを教訓に、「自分が最も大切だと思う"1(1人)"の数字は、他の"10000(1万人)"よりもはるかに重く残る」と強調。「"1"のリアリティを想像すると、命を守る常識が変わる」と話し、命の尊さに基づいた教育の重要性を説きました。

東日本大震災の悲惨さを語る陸前高田市の金教育長

 また、掛川市の佐藤教育長は、「南海トラフ巨大地震に備える」と題しで、掛川市が行ってきた、小中学校連携による避難訓練やハザードマップづくりなど地域連携型の防災教育の事例を紹介。
今治市の八木教育長は、「今治市の防災教育」に関して、温暖な気候で災害が起こりにくい同地だからこそ、防災への備えと意識向上が必要であることを強調しました。

 一方、文部科学省からは、同省総合教育政策局の安彦広斉氏が、新学習指導要領に基づく防災教育への取り組みについて説明。「学校の安全を保守するためには『安全教育』と『安全管理』を両輪に、日々の安全管理のマネジメントが重要」とし、「学校の危機管理マニュアルの作成に取り組んでいただきたい」と促しました。また、学習指導要領の改訂のポイントは「生きる力」にある点を強調し、未知の状況に対応できる人材育成の重要性を力説しました。

  • 登壇する文部科学省の安彦氏

    文部科学省の安彦氏

  • 熱心に聞き入る教育長ら

    熱心に聞き入る教育長ら

 会議はこの後、B&G財団の事業紹介などを行い、B&G全国教育会議の「B&Gプランを推進する提言」を再確認し、閉会しました。今回の教育長会議で再確認したB&Gプランを推進する提言は以下の通りです。

B&Gプランを推進する提言

一.自然体験活動を実践する「指導員の養成」と「B&G指導者会の設立」推進

一.地域と学校との連携強化

一.海洋性レクリエーション事業の推進

一.親子・家族の絆の推進

一.海洋センター・クラブの活用

一.環境・防災・水辺の安全教育の推進

一.全ての子供たちへの体験機会の提供

一.誰もが参加できる海洋センター活動の推進

一.海洋教育の積極的推進

※提言は2019年1月22日に開催される「B&G全国サミット」で報告される予定です。