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ロンドンオリンピックを目指します! 北海道室蘭市B&G海洋センター松苗幸希さん

写真:北海道室蘭市B&G海洋センター松苗幸希さん

B&Gアドバンスト・インストラクターでもある松苗さんは、選手であると同時に指導者としても活躍しています

 室蘭市B&G海洋センター指導者でセーリング2010世界選手権日本代表でもある松苗幸希さんは、1月4日から9日にかけて、鹿児島県で行われた「レーザーラジアル級ナショナルチーム選考会」に参加しました。
 総合6位で全日程を終え、優勝者に与えられる2011年度ナショナルメンバー入りは逃したものの、「まだ五輪出場の可能性は残っている。1年間しっかりと練習したい」と意気込む松苗さんから、「レーザーラジアル級ナショナルメンバー選考会」を振り返ってのレポートが届きましたので、ご紹介します。

2011年度レーザーラジアル級ナショナルチーム選考レースを終えて

2011年度ナショナルチーム入りを目指して!!

写真:北海道室蘭市B&G海洋センター松苗幸希さん

レーザーラジアル級というのは、レーザー級という艇種のセール面積を小さくしたもので、2008年の北京オリンピックから一人乗りの女子種目として採用された艇種です

 私は、2年ほど前から1年後に迫るロンドンオリンピック出場をかけてセーリング競技のレーザーラジアルという種目に乗りはじめました。
 大学卒業後は現役を退き指導に徹しようと思っていたのですが、卒業後室蘭市体育協会のB&G海洋センターに勤務させていただき、B&G財団とも密接にかかわることが出来るようになったことでより一層ヨットとのかかわりが強いものとなり、気持ちが変わっていきました。
 たくさんの機会を与えてもらううちに、オリンピックが手の届かないところではないことを感じ取り、昨年度からロンドン五輪へのチャレンジをやってみることに決めました。
 チャレンジをはじめてから2年、職場の理解と協力、またその他の周りの方々からの支援によって、国内の様々なレースに出場させていただいております。昨年においてはオランダのワールドカップ、イギリスで行われた世界選手権と海外でのレース経験も積むことができました。

写真:北海道室蘭市B&G海洋センター松苗幸希さん

大学時代を過ごした鹿児島県での大会となりました

 私にとっては、北海道という特に冬季間は他の選手と比べると少し不利な環境の中での活動となっていますが、こうした大きなレース経験をもとに2011年1月4日から9日まで鹿児島県で行われたナショナルチーム選考会に出場してきました。
 この選考会は2011年度のナショナルチームを選出するための大会で、私が出場するレーザーラジアル級は出場選手8名中代表になれるものは1名だけという厳しい枠組の中で行われました。
 しかし、この試合でナショナルチーム入りを果たせれば、2011年度の海外でのレース出場や長期間の海外遠征が約束されるため、絶対に勝ちたいという思いで臨みました。
 選考会は冬の1月という強風が期待される時期に合わせて開催され、「強風域に強い選手」を選出することをターゲットとしたレースでした。自分自身は「順風域」を得意としているので強風域は苦手でした。まずはそこを克服しなくてはならず、身体の足りない部分の筋力トレーニングや体力アップ、強風下での乗り込みが必要でした。
 身体の面では、夏の忙しいシーズンが過ぎるとようやく時間に余裕が生まれ、集中的にトレーニングを行うことが出来ました。体重はあと5キロほど増やせていればなお良かったのですが、筋力・体力の面においては総合的に持久力をつけることが出来ました。身体の準備としては非常に良い状態でレースに挑めたのでよかったと思います。

B&Gのセールが背負える看板があるということの心強さを与えてくれました

写真:北海道室蘭市B&G海洋センター松苗幸希さん

B&Gのステッカーを貼ったセール

 しかしながら、冬になると北海道ではどうしても海上での練習には限界があり、乗り込み不足という気持ちの面での不安が残っていました。この不安を取り除くためにはとにかくヨットに乗る回数を増やすことと考え、レース開催地へ少し早めに入ることにしました。
 自分のヨットを鹿児島まで持っていかなければならなかったので、車にヨットを乗せて小樽から京都の舞鶴までフェリー、舞鶴から1000キロの道のりを陸路で運転していきました。移動に丸々2日間かかったので、1日休養の後自主練習から始めました。その後年末合同合宿があり、これに参加することで強風域の中で普段よりもしっかり乗り込めたので技術の向上に結びついていることを感じとることが出来ました。あとは自分の持っている力を出すのみという、最善のコンディションで試合に臨めたことはとてもよかったと思います。
 レース期間になると、B&G財団のステッカーを貼ったセールを掲げ海に出るということで、自分のみの戦いではなく、室蘭市体育協会、またB&G財団の代表として出場させていただいていることへの重みを感じました。応援してもらっている皆さんの思いを胸に、レース前は少し緊張していましたがプレッシャーに押しつぶされる様なことはなく、逆にとても強い気持ちを保つことができました。背負える看板があるということの心強さがより一層感じられました。

写真:北海道室蘭市B&G海洋センター松苗幸希さん

出艇前に念入りにストレッチをする松苗さん

 ナショナルチーム選考レースは1レース1時間強のレースを1日3レース、朝の9時から海へ出て16時くらいまで陸には帰って来られません。ご飯やトイレも全て海上で済ませます。南国鹿児島とはいえ冬の海は非常に寒く、選手にとっては体力的にも精神的にも非常に厳しい試合です。この状態が5日間続き、合計15レース行われる予定の選考会は国内で行われる大会で一番過酷なものだと思います。

 しかし、自然が相手のスポーツなために確実に15レース消化できるとは限りません。そのため、10レース成立した時点で自身の最も悪いレース2つを除外できるというルールなのですが、全てのレースができないかもしれないということを考え1レース1レース大切に戦わなければ、後半の展開が苦しくなってしまいます。できるだけ序盤ではスコアを崩さないようにと、程よい緊張感を持ったまま迎えた初日は選考レースらしからぬ風で1〜3m/sという軽風レースで始まりました。私は軽風のレースは苦手ではなかったので内心「ラッキー」と思ったのですが、風向きが安定しない海面だったので誰に運が向くかわからないようなレースでした。

経験不足を感じたレース

写真:北海道室蘭市B&G海洋センター松苗幸希さん

強風の中のレースとなりました

 第一レースは4位となり、自分の中での許容範囲内というくらいの成績で始まりました。自分の中では4位がボーダーライン。全てのスコアを4位以内でまとめたいと考えていました。その後、風が吹き上がり選考レースらしくなってきて6〜9m/sの順・強風域のレースとなりました。2レース目はミスがあって6位、3レース目は少し風が弱くなり、思いと技術面が上手くマッチしてトップを取りました。6m/sくらいまでの順風域だと今までの経験でも1位を獲れる確立が高く、自信につながりました。しかし、やはり8m/s以上の強風域になってくるとトップの選手からは少し遅れてしまっているのがわかりました。

 2日目以降は風向があまり定まらないながらも、風は強く吹いて毎日8〜10m/sオーバーの強風域でのレースとなりました。今までの自分であれば、強風下での長時間のレースでは最後バテ気味になってしまうことがあったのですが、今大会は違いました。自分でも少しびっくりするくらい最後まで集中力が続き、筋力と体力がアップしていました。

 初日・2日目は悪くない形で終え、やっとトップの選手と同じ土俵に上がれるだけの力がついてきたなと感じました。3日目、これからが勝負と意気込んでいたのですが、本当に小さなミスや、一瞬の判断ミスから悪循環が止まらなくなってしまい、悪い流れのまま4日目が終わるまで立て直せませんでした。

 5日目には調子を取り戻せたものの、すでに手遅れという状態でした。

 技量は変わらないのに自らミスをしてしまう。これがいまのトップとの差になっているのだと感じました。
 原因は何か…
 圧倒的に経験不足ではないかと思いました。海外レースを転戦しているような選手と初めて昨年初めて海外レースに出られるようになった自分。レースに対する心構えから、相手に与えるプレッシャーのかけ方、瞬時の判断、レースの忍耐力…そういった面に違いを感じました。今回の最終成績は6位と、改めて数字で見ると最悪です。
 あのミスさえなければ…という場面はたくさんあります。でも、そのミスを含めて結果が実力です。現段階での選考会出場選手の現状は1・2位の選手が少し抜け出て速く、3〜6位はあまり力の差はありません。


1年後の最終選考会までに必ず調整をしてラストチャンスに結果を残したい!!

写真:北海道室蘭市B&G海洋センター松苗幸希さん

ロンドンオリンピック目指して頑張ります!!

  ロンドンオリンピックへのチャレンジはあと1年残されています。1・2位の選手に対しても今まで感じてきたような単なる技術の差・力の差を感じることはなくなったので、あと一年あればまだまだ追いつき追い越すこともできると確信しました。今回新たに見つけられた自分のウィークポイントを半年間で改善し、1年後の最終選考会までに必ず調整をしてラストチャンスに結果を残したいと思います。

 今回のこのナショナルチーム選考会に出場するにあたってはB&G財団、室蘭市体育協会を始めとして、たくさんの方々に応援していただきました。皆様の応援がなければこのような挑戦をすることもできませんし、強力なバックアップが私自身の力に変わりました。心より感謝しております。

 私はセーリングの競技活動をしていく上で、たくさんの悔しい思いをします。しかし、自然を相手に挑戦することの楽しさも覚えてきました。与えていただいた素晴らしい経験を自分だけのものにするのではなく、ヨットや海洋性レクリエーションを楽しむ人々に還元できるよう努めて参りたいと思います。

 また、ロンドンオリンピックまでの変わらぬ応援をよろしくお願いします!!